2016年4月26日火曜日

[2097] 『ツレうつクラシック』 2010年11月6日 11時20分



[2097] 『ツレうつクラシック』  2010116 1120

レオン さん

私は二一歳の猫と同居している。腎不全を患い、少し認知症気味のこの猫は、子猫の 頃から私の弾くピアノを聴いて育ったのに、今ではピアノを弾くと大声で鳴いて抗議す る。ただ、たまに思い出して吉松隆の「プレイアデス舞曲集」を弾くと、おとなしく寝てい る。「好き嫌いしやがって」と、思わず愚痴りたくもなる。 
『ツレがうつになりまして』のツレさんが、うつ病回復期に聴いたクラシックをチョイスし たコンピアルバム。冒頭にひっそりと穏やかに浮かび上がり、確かな存在の痕跡を刻 み付けるピアノ曲は、吉松隆のものだ。ピアノは弦、そんな当たり前のことを思い出さ せる、シンプルな音の粒たち。ツレさんもうちの猫同様に、すべて受け入れ難く味わい にくい中で、不覚にもするりとこのピアノの音を住まわせてしまったのだなと、妙な共感 をする。 
この現代作家の作品の後には、近代の交響楽の隙間に佇む、透明で牧歌的な響きが やってくる。そして弦のシンプルな旋律が胸に沁み入る室内楽に移り、力強い旋律を 人の声が歌い上げるプッチーニ「トスカ」で幕を閉じる。 
こうして構成された音楽を聴いていると、単純に、人間が生きる中で生じたものが音楽 なのだと思う。大仰な役割を担うことのない音楽。ただの人がただの音楽を生み、それ をただの人が聴いて、そっと寄りかかる。音楽に権威を与えるとろくなことにならない のは、歴史も伝えている。猫に音楽の好き嫌いを見る私もまた、愚かなただの人。そ んな「ただの人」たちが生きてきたから、音楽が生まれ再構成され伝えられる。これを 「仕事」と呼ぶなら、「ただの人」もなかなか悪くない。 
音楽 『ツレうつクラシック』 「ただの人」が生み 伝える それが音楽 二本木かおり にほんぎ かおり/日雇いミュージシャン 『週刊金曜日』2010年9月10日号 44ページ 
……「『ツレがうつになりまして』のツレさんが、うつ病回復期に聴いたクラシックをチョイスしたコンピアルバム」って、どういうものか。少し、聴いてみたいですね。

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