[1938] 現地報告「ワールドカップの喧騒と南ア」② 2010年7月1日 20時12分
レオン さん
南アフリカでもサッカー人気は高いが、サポーターの多くは黒人だと言われている。白
人の多くはサッカーよりもラグビーやクリケットに夢中で、日頃からスポーツショップで
はラグビーチームやクリケットチームのユニフォームが一番目立つところで売られてい
る。黒人は人口の八割を占めており、数の上ではサッカーファンの方が圧倒的に多い
にもかかわらず、購買力を持つ白人(人口の1割弱)が支持するスポーツの方が商業
的にも旨味があるのだろう。 この一大イベントに対して政府、政権与党のANC(アフリカ民族会議)はもちろんのこ
と、COSATU(南ア労働組合会議)や南ア共産党までもが開催を祝う声明を出し、南
アのナショナルチームを応援しようと呼びかけている。新聞やテレビは言うまでもな
い。 いたる所で目にする国旗はこうして、日頃サッカーにはあまり関心を示さない層を取り
込む形で、ナショナリズムを作り出している。
自然発生的なストライキの波 ワールドカップが始まって、この南アフリカの抱える矛盾が、いろんなところで現れてい
る。まずチケットに関して。開会一カ月前にFIFAは、チケットが五十万枚売れ残っていると
して店頭対面販売を開始した。それまでの販売方法は、インターネットで予約して銀行
に代金を振り込み、開催直前になって指定場所でチケットを発行してもらうというもの
だった。ところが、予想以上にチケットが売れ残ったのだ。
その原因は、サッカーファンの多くがインターネットへのアクセス手段を持っていなかっ
たこと、しかもチケットが高額のために購入できないことだった。店頭販売を開始して
売れ残りの半分近くをさばいたが、それでも完売していな
いという。人口の六割が貧困層、人口の三割が一日二ドル以下での生活を強いられ
ているこの国で、これらの人々が一枚が一週間分の、場合によっては一カ月分の生
活費に相当するチケットを買う余裕などない。だからファンの多くは、各地に設置され
たファンパークに行くか、テレビで観戦しているという。そのために空席の目立つ試合
が続いている。(続く)
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