[1655] シーシュポスの神話① 2009年11月6日 22時18分
国士無双 さん
度々、国士無双です。
私の学生時代好きだった作家にフランスのアルベール=カミュがいます。
カミュの書いた「シーシュポスの神話」の中に次のような一節があります。
天のない空間と深さのない時間とによって測られるこの長い努力のはてに、ついに目
的は達せられる。するとシーシュポスは、岩がたちまちのうちに、はるか下のほうの世
界へところがり落ちてゆくのをじっと見つめる。その下のほうの世界から、ふたたび岩
を頂上まで押し上げてこなければならぬのだ。かれはふたたび平原へと降りてゆく。
(中略)この男が、重い、しかし乱れぬ足どりで、いつ終りになるかかれ自身ではすこし
も知らぬ責苦のほうへとふたたび降りてゆくのを、ぼくは眼前に想い描く。いわばちょ
っと息をついているこの時間、かれの不幸と同じく、確実に繰返し舞い戻ってくるこの
時間、(中略)かれは自分の運命よりたち勝っている。かれは、かれを苦しめるあの岩
よりも強いのだ。
(カミュ『シーシュポスの神話』清水徹訳
新潮文庫 1969年7月初版 2006年9月改版 pp.212-213
この文章をある批評家が現代に当てはめています。
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